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カートリッジとトーンアームによる低域共振周波数(f0)とダンパーのエージングについて。 中川 伸

MC-F1000の開発によって分かった事、それは低域共振周波数(以下f0)が音質を決めるかなり重要なファクターになっていることです。しかし本来だと、これを調べるにはハードルがかなり高いのですが、簡単に調べるグッズ「f0チェッカー」を作ったので、先ずはこのご紹介です。


カンチレバーは針圧を加えれば沈み、上げれば戻るバネ性(コンプライアンス)があります。ヘッドシェルやトーンアームには重さ(等価質量)があり、バネと重さがあれば低域共振(f0)が起こります。輪ゴムに錘をぶら下げ、下に引いて放せば上下運動を繰り返すのと同じ原理です。約20Hz以上の音楽成分に対してはカートリッジのボディーが動かず、スタイラスとカンチレバーのみ動くのが好ましいので、重い方が良い事になります。しかし、重過ぎると数Hz以下の反りや偏心に対しては追従が遅くて不安定になります。一方、軽くすれば反りや偏心への追従は良いのですが、カートリッジを音響的にしっかりと支える能力は低下します。古くから、この妥協点としてのf0は7Hzから10Hz位が適当とされています。しかし、溝への追従を重視する場合は10Hzから15Hz位が良いともされています。私の場合は整った条件下での音質を優先したいので7Hzから10Hz側を推奨します。

私は幾つもの好きなカートリッジで個別に適切なヘッドシェルの重さを調べていましたが、そういった針圧1.2から2g位のカートリッジで9インチクラスのショートアームでは13から15g付近が良かったです。悪かった組み合わせ例は、WE-506/30のロングアームでヘッドシェルがULS-3X(18g)でカートリッジがPC-70MC(1.2g針圧)だと、平らな盤であっても、いつもフラフラと不安定でした。専門的に言えば、f0が低過ぎて、Q0(キュウゼロ)は高過ぎて、共振が止まりにくい組み合わせです。つまり、ハイコンプライアンスの軽針圧カートリッジならショートアームに軽めのヘッドシェルで、重針圧用(2.5g付近を超える)ならこの逆が適合し易いとも言えます。ところが、ある条件で気に入ったヘッドシェルがあれば、どのカートリッジでも、それを使いがちですが、カートリッジを生かしきるには組み合わせるヘッドシェルの選択はとても重要です。折角の高価なカートリッジであっても、ヘッドシェルによって真価が発揮されないなら何とも勿体ないことです。

その指標として、1970年頃だとf0のテストレコードは色々あって測定データも多く発表されていました。現在ではとても少なく、古いDENON製のメタル原盤から作った日本オーディオ協会からの「AD-1」位になりました。テストレコードはRIAAで記録するとカッテイングヘッドやカートリッジに負担が掛かるので、独自カーブによる専用イコライザーが必要になり、レコーダーも必要となります。以上からして、今、f0を調べようとすると、めっぽうハードルは高いです。


使ったソフトは無料になったMicro Cap12で、使い方はYoutubeで紹介しています。Micro Cap12

因みにMC-F1000と0 Side Forceの組み合わせで音の良かった状態をAD-1で測ってみました。すると7から8Hz付近だったので音質的には適切とされる範囲でした。私としては7から8Hzを音楽再生用の最適値として推奨致します。どのように良いかといえば、低音楽器の明瞭な骨格と押し出し感です。

CA-TRS-1007 full scale 50dB B&K2317

AD-1 full scale 50dB B&K2317       TRS-1005 full scale 50dB

以上のようにf0が重要な指標であることに変わりはないので調べる方法を考えました。適当な小さいスピーカーユニットを選び、4から25Hz位を発振器で振動させます。するとスピーカーのf0は約100Hzで、アームのf0はこれ以下なので一定振幅になり、テストレコードと同じ動作になります。MMやMCは速度型なので高域を下げるイコライザーが必要と思うかも知れませんが、後述する様に音を聴く訳でもなく、調べる帯域も狭いので特に必要ありません。厳密には速度最大となるf0に対して、振幅の最大点は積分的な関係なので僅かに低くなりますが、これも、さして問題にはなりません。振幅はレコード基準の0.1mmを超えないように心掛けました。共振点の調べ方は、針を揺らすアクチュエーターに針先を乗せ、ダイアルを回しながら振幅の最大点を目で観測します。その際の振幅は0.3ミリ位なので肉眼あるいは老眼鏡の2枚重ねでも見え、その時の目盛りがf0という、とても使い易いものにしました。

ただしオイルダンプのアームだとf0が分かりにくい可能性はあるので、その際はオイルを抜けば分かり易くなるでしょう。でも、オイルダンプの場合は、f0がずっと低めでも良いかと思います。というのは、GRAYの重いオイルダンプを使った経験では、不安定な事は特に起きませんでした。ヘッドシェルが重いと低域が伸びる事は理論的に説明できますが、高域は軽い方が爽やかに伸びて聴こえ、これは理論では説明困難ですが体験的には普通に感じることです。

さて、これにはカートリッジのエージングマシンとしての更なる有効な用途もあります。それは、多分30年ほど前だったと思いますが、気に入っていたFR-1MK2は何個もストックしていて、その中にはダンパーの硬いのがありました。それでもしばらく使っていると柔らかくなった気がしました。そこで、親しくして頂いていた設計者の故池田勇氏に問い合わせたら、「少し使っていれば柔らかくなるよ!」とのことでした。そうしたら、1ヵ月ほどで柔らかくなって普通に使えるようになりました。ダンパーは年月の経過で硬くなるタイプと、トロトロになるタイプが合わせて2%ほどありましたが、硬くなったものは程度次第で、この方法によって復活させられる可能性はあります。しばらく休んでいたカートリッジは寝起きが悪いので、目覚めさせるためにピンクノイズのエンドレスレコードがあり、それによれば、40から100時間のエージングを推奨とのことなので、私の経験とも概ね一致します。新品のカートリッジでも200時間以上鳴らしてようやく本領を発揮した機種(AT-ART7)がありました。でも摩擦をさせれば、針が減ります。今回のものは、磨耗させることなく連続使用でダンパーを目覚めさせるので時短にもなります。

新品のエージングをするにはAGINGポジションで半日から4日位を目安に行います。水平振動の振幅はレコード規格を超えない範囲に抑えているので安心です。MCコイルの引き出し線は水平振動には強くなる角度に工夫されているそうです。なので、カートリッジによっては、垂直振動だとダメージを受けやすいものもあるので、一般的な縦振動の電動式スタイラスクリーナーの多用には注意してください。私は多用し過ぎて、MCカートリッジのコイルを金属疲労で断線させてしまったことがあります。過ぎたるは猶及ばざるが如しでしたが、MMでステレオ用ならスタイラスクリーナーを多用しても大丈夫だと思います。スピーカーのボイスコイルも引き出し線の角度には工夫をしているそうです。

波形にはいくらかの高調波を残し、高い周波数成分も含ませる事で、音楽信号への貢献も期待しました。f0測定は短時間で終わるので、アルカリの006Pで十分ですが、エージング用はそれなりの時間が掛かるのでACアダプターが必要になります。この場合はACアダプターを外部端子DC INに接続しまが、すると内部バッテリーは切り離されます。附属のACアダプターは9Vでセンター+ですが、誤って別な物を使うと壊れる可能性はあります。必ず付属の9Vをお使いください。アクチュエーターのコネクターは電源と同じものを使いましたが、間違えて入れ替えても壊れない設計にはなっています。付属の電源はスイッチング方式なので、使わない時は抜くようにしてください。厳密に言えば音質に悪影響を与える可能性があるからです。

これ迄には無かった製品なので、どれほどのニーズがあるのか分かりませんが、とりあえず100台を作ることにしましたので、興味を持たれました方は、ご予約をお願いいたします。100台で終わるかもしれませんが、要望が続くなら再生産は可能です。これはお使いの愛用カートリッジから真価を引き出すためのお手伝いグッズで、特許出願もしました。予定価格はアクチュエーターと発振器と電源のセットで税別\32,000円です。ではよろしくお願い致します。

なお、ヘッドシェルを交換する際は、非常に好評なMITCHAKUシリーズを是非お試しください。多くのヘッドシェルは上にある1本のピンだけをアームが引き込みますが、その直下で4本の電極ピンが後ろから押します。なので口金の下側には必ず隙間ができます。これがグラグラの原因で音の明瞭度、特に低音楽器の明瞭度を妨げます。この隙間を見えなくするためにゴムリングを付けますが、あくまでもごまかしに過ぎず、曖昧さは残ります。MITCHAKUシリーズは口金の上下のセンターに横ピンを設け、そこを支点として上下が連結した可動ピンで引き込む構造なので必ず全周が強固に密着します。いわば4本ピンの中心をしっかりと引き込むシーソー構造こそがMITCHAKUの由来です。高級アームにはヘッドシェルを使わずにカートリッジを直接に取り付けるものが多くありますが、このグラグラを避けることで、カートリッジの真価を引き出すためです。


0 Side Forceのパイプ先端は左右を狭くして無理矢理口金を挿入した上で、下から2本のねじで止めることにより、強固な嵌合を実現しています。つまり、左右上下のガタをミクロン単位で排除しているのです。MITCHAKUシェルを使ったにも拘らずグラグラするとの報告がありましたが、調べてみたら某アームの口金部の構造に起因するガタでした。

今ではMITCHAKUシリーズの中でも1番のオススメ、それはMITCHAKU-Zです。角度を付けたオフセットアームからでも、ピュアストレートの良さが味わえるユニークなもので、実は今、最も好評なモデルです。アームにはトラッキングエラーを少なくするためにオフセット角を設けていますが、これは逆に時間揺らぎを生じさせるという、今まで見落とされていた、より重要な副作用があります。そのため甘く膨らんで曖昧な低音になります。詳細はトーンアームとターンテーブル4 音の違いを聴き比べられるようにしました。をご覧になってください。

実際にはオフセットアームもピュアストレートアームもトラッキングエラーが0のポイントで音が良くなった経験はありません。それよりも最外周が最も音が良くて、最内周で最も悪い体験が殆どです。つまり線速度に比べればトラッキングエラーは取るに足らない要因でしかないのです。MITCHAKU-Zによって空論ではなく、以上の事実が体験可能なので、トラッキングエラーという角度への過度な束縛から解放される事でしょう。偉大なるウェスタンエレクトリック社(後にウエストレックスになりカッティングヘッドではノイマンと共に有名)はピュアストレートアームしか作りませんでした。曲げる事の弊害をいち早くから認識していた高い見識は流石で、頭が下がる思いです。

ピユアストレートアームを世にご提供なさった所へは、その見識に敬意を込め、以下にご紹介させて頂きます。ウェスタンエレクトリック、江川三郎、スタックス、ベスタクス、ヤマハ、 大沢久司、ViV laboratory、竹本悦生、由紀精密、HANIWA、アムトランス、ムジカノートなどです。(以上敬称略)

f0 Checkerのご予約はフィデリックス又は販売店様にお願いいたします。暫定価格 \32,000(税別)です。
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